慟哭の彼方
何度もお金を渡そうとする彼らに、チェルシーはきっぱりと首を横に振る。
彼らが諦めかけた頃、リイアが突然チェルシーに向かって両腕を伸ばした。
その手には大輪の花束があった。
「お金は、もらってくれそうになかったから」
ささやかで、けれど美しい贈り物に彼女の目がゆるゆると細まる。
「…あぁ、こっちの方がお金よりもずっとうれしい」
ありがとうと呟いた声はほんの少し掠れていた。
何度もこちらを振り返りながら手を振るリイアに、チェルシーは恥ずかしそうに手を振り返していた。
あの人とも、こんな別れ方をできたならよかったのに。
アルスの心の声は胸の奥深くに、幾重にも鍵をかけてしまっておくことにした。