慟哭の彼方


「ありがとう!また会おうね!」

無邪気に声を張り上げる幼い少女の声が、いつまでもいつまでも鼓膜の裏に響いた。


チェルシーと視線が絡み合う。

ごくりと喉仏が音を立て、アルスは続きを言うことができなかった。


吐息がこぼれたところで、再びドアが乱暴に開く。

「チェルシー、いるか?」


機嫌の悪そうな顔つき。
けれどもそれが彼の素顔であることを知っている。

彼は少し怯えた目でアルスを見、それからチェルシーに目を留めて微笑む。


以前思い切り襟首を掴んだことを根に持たれているのだろうか、思わずため息がこぼれた。


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