慟哭の彼方
だけど現実はいつだって思い通りにはいかないもので。
「思い出したんです」
その一言に、チェルシーの瞳が大きく見開かれた。
やめろ、それ以上しゃべるな。
それ以上言ったらチェルシーが。
「俺はマイラスに謝らないといけない」
彼の首を、彼の口を力いっぱい塞ごうと動いた手は虚しく空を切った。
膨らみ切った風船に針を刺した時のように、すべての力が彼女の体から抜けていく。
「マイラス」
呟く声があまりにも頼りなくて。
「マイラス」
叫ぶ声があまりにもか細くて。
「マイラスぅ…」
泣きだす声は、あまりにも悲しかった。