慟哭の彼方
彼女が声を上げて泣く姿があまりにも珍しくて、しばらく身動きが取れなくなる。
そうして気付く。
そんな風に泣かせたのは、彼女を守り切れなかった自分のせいだということに。
知らないうちに、こぶしは鬱血して色を失くすほど握りしめられていた。
自分の情けなさにも思い通りにいかない出来事にも腹が立つ。
いつだって、彼女をすべての障害から守れる人でありたいのに。
キッと青年を睨みつけると、彼は多少たじろぎながらも退かなかった。
「ここが願い事を叶えてくれる店だと聞きました。俺の願いも叶えてもらえませんか」
瞬間、時が止まればいいと思った。
そうすれば自分たちは、彼に苦しい現実を突き付けなくて済む。