慟哭の彼方


それまで一人称を使うことのなかった彼女が、アルスとしゃべるようになってから自分のことを「オレ」と言うようになった。

チェルシーにその一人称を与えたのが自分だということが誇らしかった。


彼女と話せば話すほど想いは深まったが、同時に周囲からの視線も痛くなった。

その理由を考え始めていた時だった。


「魔女なんだ」

彼女からの告白を受け取ったのは。


世間で忌み嫌われている存在、禍々しいと遠ざけられる存在。

それと彼女が口にした単語がうまく結び付かず、彼は聞き返す。


それにしても――。
あの時の自分はあまりにもひどかった。

今でも思い出して後悔するほどだ。


「オレが、魔女なんだ」


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