コンパスで作る地球
「らく……」
「楽?」
そう。私にとって応用問題は基礎の問題に比べて楽だった。それは答えを出すことが楽なわけではない。
気分が楽なんだ。
「難しい問題を解いている間は何も考えないで済む。」
普通に難しい問題を読んで。
「何を考えないの?」
気が済むまでたくさんの計算式を立てて。
「嫌なことや。忘れたいこと。苦しいこと。」
とことん問題の世界に入り込む。
「…。」
その間私は頭に問題のことしかない。私はマニュアルの通りにしか動けない。
そうやって私は過去を乗り越えたの。いや……逃げたんだろうね。弱い自分は。
「その問題が解けたら。また違う応用問題に取り組んで。取り組んで。……問題に現実を壊してもらう。」
君に会えない寂しさ……君に対する密かな想い……君と生きたこの地球……すべてのことを考えないで済む。
答えの無い問題を考えるのは苦しかった。時間が立つことを実感するのが怖かった。
慶太が……過去の人になるのは死に物狂いで避けたかった。気の毒だった。
だから……慶太のことを考えないために。慶太の死を考えないために。私は髪を切ったり応用問題を解く。