片思いの続きは甘いささやき
ようやく落ち着いて雪美が出勤の準備を急いでいる時、喬の携帯が鳴った。

雪美をアマザンに車で送ろうとリビングにいた喬が携帯に出ると。

『電動自転車買ってくれるって~』

突然飛び込んできた大きな声に、思わず耳元から携帯を離してしまった。

「な、なんなんだよ。突然叫ぶな」

ため息を吐きながらも、とりあえずそう答えると、電話の向こうからは明るい笑い声。

「おい、悠里!朝っぱらからなんだよ。こっちは忙しいんだよ」

『え?今日休みじゃなかったっけ?』

「仕事休みでもいろいろあるんだよ。で、何?電動自転車買ってもらえるのか?」

ソファの背に体を預けると、視界の隅には雪美の姿。
仕事に行く準備はできたようで、スーツ姿に鞄を持って所在なさげに喬を見ている。

仕事に間に合うためにはそろそろ出かけなければならない雪美は、小さな声で

「行ってくるね」

と囁くとにっこり笑って玄関へ向かう。
喬の様子を気にせずに、とりあえず急いでいる後姿を目で追いながら、相変わらず明るい声で何かを話している悠里の言葉を無理矢理遮ると、喬は

「なんか用があるならメール入れといてくれ。時間ないから切る」

電話の向こうの悠里を無視して通話を終えた。

慌てて雪美の後を追うと、靴を履いて、ちょうど外に出ようとしていた。

「おい、送るって言ってるだろ。すぐ出るから待ってろ」

有無を言わせないような大きな声で雪美の動きを止めた。

車のキーと携帯と財布をジーンズのポケットに突っ込むと玄関で呆れたように待っていた雪美の手をつかんで部屋を出た。
くすくす笑いながら鍵をかける雪美は、何か喬の弱点を掴んだかのようなからかう声で

「いいの?昨日の披露宴で一緒だった元恋人でしょ?・・・悠里さんだっけ?
話途中でやめなくてもいいのに」

喬の腕に自分の腕をからませながら、見上げるその表情は、どこか楽しげで、今までに喬には見せた事のない明るく軽やかな雰囲気。
どこか慣れないそんな雪美の様子に、少しの違和感を感じつつも、自分から腕をからませて甘えてくる雪美が愛しくて。

このままもう一度部屋に戻って愛し合いたくなる。

仕事なんて休ませようか・・・。なんて無理だとわかってるさ・・・。









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