片思いの続きは甘いささやき

喬のマンションから雪美の勤務するアマザンホテルまでは、車で20分ほど。
程よくすいている朝の大通りを走らせる喬は、助手席に座る雪美の手をそっと握ると

「悠里とは、もう何でもないから。あいつもうすぐ結婚するし。
雪が気にするような事は全くないから」

信号待ちを待ちかねたような口調で話すと、じっと雪美をうかがう。
ほんの少し不安げな、雪美の反応を気にする喬に、雪美は思わず笑い声をあげて。

「何にも気にしてないから。喬に恋人がいたのは知ってるし。いちいち気にしない。
それに、前付き合ってた女の人ってかなり多いって聞いたもん、その人達の事で右往左往しててもどうしようもないし。
・・・私は喬の過去は気にしないから」

喬に握られた手を恋人つなぎに変えると、ぎゅっと握り返して、雪美は肩を竦めた。
温かい笑顔を向けるその穏やかな態度は、喬の予想していたそれとは違っていて、なんとなくさらに不安がつのる。

自分の過去を・・・以前つきあってた女の事を気にしないって、そんなのできるのか?
とりあえず今でも連絡をとりあっている悠里からの電話くらい、もっと気にして色々聞いてきたりしてもいいんじゃないのか?

「じゃ、俺が悠里と会ったりしてもいいのか?」

「・・・いい気分じゃないけど。できれば会って欲しくはないけど。
喬が会いたいって思うなら会っていいよ。・・・浮気なんてしないでしょ?」

「そりゃ、浮気なんかしない。俺、付き合った女の数は少なくはないけどダブったり浮気した事はないから。それに浮気するかもしれない程度なら、雪と結婚しようとはしない」

ちょうど信号が青に変わって、喬は軽くため息をついた。
運転をしながらも、雪美の手は握ったまま。

「雪と結婚するのは、軽い気持ちじゃないし、今までの誉められない女関係だってこれからはないから。何があっても雪だけだから」

まるで焦っているかのような上擦り気味の声は、雪美に伝わっているのかいないのか…。
喬は思いがけない自分自身の焦りに戸惑っていた。
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