片思いの続きは甘いささやき



新郎新婦が金屏風の前に座って微笑んでいる。
色打掛に身を包んだ透子は艶やかで、普段より派手な化粧を施された顔には幸せ以外の何の感情も見せていない。

そんな彼女の隣にいる濠も、ようやく妻にできた愛する彼女を自慢げに友人達に紹介していた。

もうすぐお色直し。

雪美は、会場の片隅から全体を見渡す。
滞りなく進んでいる宴にホッと息をつきながら、ピンマイクに囁いた。

「そろそろ新郎新婦を退席させてちょうだい」

ガヤガヤと賑やかな中、見ると、係に促されて席を立つ濠と目が合った。

照れくさそうに笑いかける彼の表情に、思わず雪美の頬も緩んでしまう。

好きだった人が他の女性と幸せになる。
本当なら立っていられないくらいにつらいだろうと覚悟をしていたけれど。

実際は。

雪美の心は穏やかで、解放された心地良さに満たされていた。
浮かぶ笑顔も自然で。

お幸せに。

雪美の本心からの気持ちが、濠にもちゃんと届いているよう。

同期として培った絆故のアイコンタクトを交わしながら。
しばらく雪美はぼんやりと濠と透子を見つめていた。

そんな彼女の背後にいつの間に立っていたのか。

「やけに親しいよな」

びくっと体を震わせて、その声に振り向くと。

苦笑しながらも、どこか冷めた表情の喬が立っていた。

「あ…あの…」

どうしていいのか、何を言えばいいのかわからないまま、気づけば俯いていた。

「雪だって、あいつが好きなんだろ?」

「え…?」

「真田さん。ずっと想ってるんだろ?」

喬の低い声は、雪美を一気に落としてしまうには十分で。

どんなにかつらかった濠への片想いよりも雪美の心を砕いてしまった。

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