Color



授業で使った図書館の辞書を、ひとり元に戻していた時、ちょうど辰先輩も、使った何冊もの辞書を戻しに来たところだった。

最初は何とも思っていなくて、顔もまともに見なかった。

あたしが、高い位置に本を戻そうとしていたけど、届かなくて手こずっていたら、

『手伝うよ』

って、全部やり終えた辰先輩がそう声をかけてきた。そこでやっと顔を見て、カッコイイって思った。

そして、胸ポケの学校トレードマークの色が、一年生を意味するあたしの緑色とは違う、二年生の青だったから、先輩だと気付いた。


『あ、すいません…』

そう言ったあたしの声は、震えていた気がする。





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