秘密な結婚
そのまま唇を重ねようと
近付いて来た顔を
軽く押して、それを制する。
「ダメよ。
……他人が見るわ。
帰りましょう」
拓真はにこりと笑うと
「家まで、お預けか」
と言った。
並んで歩きながら彼に訊ねてみる。
「…ねえ、私、一度聞いてみたかったの。
どうして…、秘密なの?」
「え」
彼が足を止めて私を見る。
「私、詳しく聞いた事がなかったから、
実はどうしてなのか、分からないの」
「……じいさんの出した条件さ。
親父とお袋と、…祐希奈に知られない事が」
へ?…どういう事?
「祐希奈さん…って」
「ああ、婚約者」
ドクリ。
心臓が揺れる。
彼女の名前……。
祐希奈……さん。