†DragonーaーTheorem†

「ねぇ、りゅうぎょくせきって?」

「ん?
あー…竜玉石ってのは、竜の腹の中で造られる特殊な石で、竜の力が宿ってるっていわれてたり、その竜と契約するときに必要とされてるもんだな。
…ほら」

ゼルアは右手をケイの前に伸ばす。彼の右手の親指には、シゥと同じ色をした、銀色のリングがはめられていた。これがシゥとゼルアを結ぶ契約、そしてゼルアが竜騎士である証なのだろう。ケイは感嘆の声をあげながら魅入っている。

「あ、んで、体外に吐き出されなかった理由ですけど……
リオネ、はらんでるみたいですよ」

そして訪れる沈黙。ケイに至っては意味がわからず首をかしげているだけなのだが、母親は驚きの表情で一時停止。父親は口をパクパクさせながら声を絞り出した。

「は、はら、はらんで…?」

「そう。ほら、子供をはらんだ雌の竜は、子供が成長する度に食事以外のことには倦怠感を覚えてなにもしなくなることがあるでしょ?それと今回のことが重なっちゃったんですね。
それとリオネのは、初期か…二次怠感期ぐらいだと思いますよ」

坦々と喋るゼルアに対し、唖然とする父。それに代わって、母親は顎に人差し指をあてて言った。

「つまり…食欲がなかったのは竜玉石が喉に詰まっていたから。吐き出そうとしなかったのは…怠感期に入っていたから…?」

「そーいうことです」

ゼルアはスッと立ち上がると膝などの埃をサッサッと払い、近くにあったタオルで竜玉石を丁寧に拭く。一度それを眺めてからケイに投げ渡した。

「よかったな、お前兄ちゃんになれるぞ」




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