†DragonーaーTheorem†

「兄ちゃん…僕が?」

竜玉石を両手で握りしめながら呆然と呟く。ゼルアは左腕を適当にぬぐいながら笑顔で言った。

「そ。まだ妹か弟かはわからないけどな。
…いやか?」

首をかしげてケイを見つめる。ケイは両手に包まれた竜玉石に視線を落とし、しばらく見つめていたがやがて笑顔で顔をあげた。

「ううん、スッゴク嬉しい!」

「…そっか」

ゼルアは上着を手に取るとケイの頭を右手で軽くポンと叩く。

「じゃ、いい兄ちゃんになるんだな」

「うん、ありがとう!」

「おぅ。…えっと、おじさんおばさん」

ゼルアは彼の両親に向き直った。その目はどこか真剣さを帯びていて、畏怖すら感じられる。二人が固唾を飲んで見守るなか、ゼルアはゆっくりと口を開いた。

「すみませんけど…
風呂、借りていいですか?」

さっきから左腕が…
と、左手をぶらぶらさせる彼の表情はなんとも言えない様子で、一瞬唖然としたケイの両親だったが母親はすぐに笑顔になると言った。

「えぇ、もちろんよ」

それに対して、ゼルアは申し訳なさそうに

「いやー、お世話になります」

髪の毛をかきながら彼女の後についてその場をあとにした。取り残されたケイと、彼の父親は静かに言葉を交わしていた。

「ゼルア兄ちゃんって、竜のことになるとカッコいいのに…
いまいち決まらないね…」

「…確かに…」

もちろん、本人は知るよしもない。




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