白い翼と…甘い香り
そう言って私の肩に手を置くと
また鏡の方へ向くように
身体を回転させた。
2人で鏡に向かって立つと
和也は肩に置いた手を
ゆっくりと胸元へ滑らせて
背中から私を抱き締めた。
私の耳許にクチビルを
寄せるような仕草で
「ドッグタグってさ
本来は犬の首輪に付けんだよ」
「へぇ~、そうなんだ?
だからそう呼ぶのね」
「飼い主さんの名前とか書いて
はぐれた時に
困んないようにね」
「そっか、ワンちゃんはすぐ
どっか行っちゃうもんね」
耳許の和也を見上げるように
首を傾けてみた。
でも、和也は笑ってる。
おかしそうに、楽しそうに
笑いをこらえてる感じがする。
「ねぇ、リカ、分かってる?
俺が言ってんの、通じてる?」
「ん?
ちゃんと聞いてるよ?」
和也はまた
クスクスと笑った。
「そう?
んじゃ、もう寝よっか?
それ、ずっと付けてんだよ?」
「私に、くれるの?」
「あげない。俺んだけど
リカが付けてんの」
「ん…?」
まだ和也は、笑ってた。