聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
 それでも、揺さぶられた気持ちが、落ち着かない。


 今まで、ナロンやフェイト、ヴォルたちと友人で有り続けた。結果、女生徒たちに嫌われ、罵詈雑言を浴びせられ、時に暴力さえ振るわれながら。―――耐え抜いてきたのだ、ひとりでその事実を抱えたまま。


 法術は心得ていたから、酷くなる前に治癒を施して、何もなかったように振舞って。―――仲のいい彼らは全員サード以上。どちらかが接触しなければ、気づかれるはずもない。


 矛先がこちらへ向くことは仕方ないとさえ思っていた。彼女たちはきっと、彼らに恋情を抱いているのだから、友人とはいえ、親しくしている女生徒がいるのは仕方がないことだと。


 ただ同時に、彼女たちのようにだけはなりたくないと、思い続けてきた。


 人に悪意を向けるようなことだけは、絶対にしない。したくない―――そう、思い続けてきた、のに。


「………こんなこと、思っちゃ、駄目……!」


 渦巻く感情が、何者かもしれぬ相手に、今にも向きそうで。


 ―――このままでは。


「……自分じゃ、いられないよ………っ」


 泣きそうな声でそう零しながら、必死に今にも爆発しそうな灰色の感情を押さえ込もうと必死になる。


 だが。……どれほど言い聞かせても震えが止まらない身体に、脳が送る信号を、撥ね付ける身体が、心が、自分のものなのかと疑いたくなってくる。
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