聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
 それでも、なんとか落ち着こうとその感情と格闘していると。


「―――サリア?」


 聞こえてきた声に振り返り、飛び込んできた鮮やかな銀色に、涙が零れた。


「……どうした?」


 歩み寄ってきたアルジスに、言葉もなく縋り付く。戸惑う声が聞こえたが、もうなりふり構っていられなかった。


 服が湿り気を帯びて気持ち悪さが沸き立つだろうに、彼はサリアを突き放さなかった。その優しさが、更に涙を溢れさせて。


「…………っ」


 言葉にならない想いが、募る。けれど、嗚咽ばかり漏れる口から、その言葉が漏れることはなくて。


 けれど、体は心に促されるままに、脳からの司令を無視して細身ながらにしっかりとした身体に縋り付く。


「アル、ジス………っ!」


「―――嫌なことでもあったか?」


 優しく掛けられた声が、どこからか安らぎを呼んでくる。
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