聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
「………俺は、どうしようか」


 ぼそりと、言葉を落とす。


「……………守りきれる、だろうか…?」


 一度は、守る抜く選択を考えたが―――脳裏を過ぎった光景が、その選択をする決意を鈍らせる。


「………俺が、守りきれるほど、強いのか………?」


 自分に、何度も同じ言葉を言い聞かせていたそのひとは、いつもただひとりを愛していた。けれど。


「…………守り、きれずに……死なせてしまった……」


 鮮やかな鮮血に染まって元々の美しい髪色を、赤毛へと変えてしまったその人の大切な相手。


 冷たくなっていく手を、光を失っていく瞳を見つめながら泣き叫び、死ぬなと泣き叫ぶその人を呆然と見つめながら。


 ――――悪夢であればいいと思った、あの日。


「……………守り、きれるはずが……ないんだ……」


 誰よりも優しくて、強かったそのひとすら、適わなかった。


 それなのに、俺、が――――……。
< 93 / 132 >

この作品をシェア

pagetop