聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
 ―――いったい、どうしたというのだろう。


 疑問には思うけれど、今は腕の中で眠る少女を、休ませてやりたかった。


 緩まない手の力をそのままに、膝を抱え上げて横抱きにする。一度自分が使っていた彼女の寝台に腰を下ろし、縋り付いた彼女を振り払えずに、共に横になる。


 そういえば、共にこの寝台を共有するのは初日以来だと思い当たる。あのときは意味が分からなくて戸惑ったが、今はむしろこの距離感に安心する。


 振り返れば、手を伸ばせばすぐ届く、距離に。


 ただ、彼女がいるだけで―――幸せだと、言える気がする。


「………あぁ、これなのかも、しれないな」


 かつて、何度も聞かされた言葉。


 ―――誰かを“大切”だと思えた時点で、その誰かは自分にとって“特別”なんだ。だから……


「…………そんな相手が出来たとき、手放すか、守り抜くか。………腹を、決めろ」


 つぶやいた言葉が、静まり返った空間だからか、異様に大きく響いた。
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