『若恋』榊の恋【完】
震える足でひかるちゃんに近づく。
「ひかる、ちゃん?」
ピクッ
白い頬が動いたような気がしたが、返事はない。
「―――何をした?」
「何を?決まってるでしょう」
視聴覚室の暗幕を潜り抜けて暗がりから声の主が近づいてきた。
足音を立てず一歩一歩と近寄ってくる。
横たわるひかるちゃんの側にしゃがみ声の主から守ろうと身構える。
「もう一度聞く。この娘に何をした?」
「何をって決まってるでしょう。薬を飲ませたんですよ」
近づく男の足が見えた。
そして、ひとつだけ点いていた灯りの中に浮かび上がった男。
「…若佐」
ひかるちゃんの担任の若佐だった。
暗がりの中に狂気が潜んでいる。
ゆらりと近づく若佐の表情が光に照らされ垣間見えた。
「天宮はわたしの言うことをよく聞く可愛い生徒でね」