『若恋』榊の恋【完】
ああ、と、成田が笑った。
「おしるしだな」
「?」
「出産が近づくと、あと数日で生まれるとほんのわずかに出血するんだ」
病気じゃないし、りおさんもその知識があったし混乱もなかったがな。
「おしるし?」
ひかるが気が抜けたように座り込む。
「病気じゃないんですね?」
「そうよ。奏さんがパニック起こしただけだから」
「じゃあ、それで若は…」
ひっくり返ったわけだ。
りおさんのことが心配で、だけどそれは出産に繋がるもので。
「成田、電話して欲しかったんですが」
「したぞ。繋がらなくてやっと繋がったと思ったら目の前に榊がいた」
持っていた携帯をヒラヒラさせた。
「結局はなんともないってことなんですね」
「まあそういうことだな」
気が抜けたひかるを引き上げて胸に抱き込んだ。
「だ、そうです。ひかる、よかったですね」
どんなに心配で飛んできたか。
ひかるを抱き抱えた震えてるその肩を包む。