『若恋』榊の恋【完】
「無事でよかったです」
若もりおさんも、お腹の御子にも何事もないと知るまで、ひかるの心細さが震えとして肌に伝わってくる。
よかった……
本当によかった。
ひかるが安堵して流す涙をそっと拭いてやる。
「榊さん、ごめんなさい。ひかるまでびっくりさせたみたいで」
「いえ。何事もなかったならそれだけでよかったんです」
北海道から飛んできたワケをりおさんが気づいて謝った。
「ごめんなさい。奏さんが騒いだりしたから」
すまなそうに眉尻を下げた。
「ひかる。びっくりさせてごめんね」
「ううん、お姉ちゃんの身に何にもなくてよかった」
「……ひかる」
よかった。
何もないならそれでよかった。
「成田、後は頼みます」
「…あいよ」
もうひとつ成田に若を頼み、早々に一階へ降りた。