『若恋』榊の恋【完】
一階へ降りていくと前広がその場に控えていた。
「りおさんは?若は?」
「ああ、無事でした。何事もなくお腹の御子も、」
告げると、前広が胸を撫で下ろした。
「どうやら若が慌て過ぎただけのようです」
本人が目の前にいたら嫌味を並べまくりたい気持ちだったがそれをぶつけるのは後にしよう。
「そうですか、よかった…」
もう何も言えず、前広も下がった。
前広に伝えた後にどっと疲れが出た。
ひかるも同様にぐったりと体を預けてくる。
「一旦、部屋へ戻りましょうか」
「うん」
膝をガクンと落としたひかるをひょいと抱き上げる。
「え、ちょ、榊さんっ」
「歩けないんでしょう?」
「だ、だけど」
「誰も見てませんよ」
顔を赤くしたひかるの額にくちづける。
今日は顔を赤くしたり青くしたりと忘れられない日だ。