吸血鬼は淫らな舞台を見る episode ι (エピソード・イオタ)
女の血を吸った数秒は頭痛があり、その後、なんの命令も下してないのに手足が勝手に動いて行きたくもない街に足を運んでしまっていた。
雑草がアスファルトを突き破り、美しかったはずの街路樹のケヤキがあちこちで横倒しになって道路としての機能を失いつつある交差点の真ん中に気づけば立たされていた。
嫌な予感がして歩き始め、ベコッとなにかが凹むような感触が足から伝わり、視線を下げると信号機についていたはずの青色の案内標識を踏んでいた。
【D e a d l e a d v e s】(デッド・リーヴズ)という過去の街の名が白抜き文字で表記されている。
落ち葉……か。
猟区域になる以前の街の名前が意外と情緒的だったことをアルファは知った。