吸血鬼は淫らな舞台を見る episode ι (エピソード・イオタ)
「誰だ?」
問いかけてもすぐに答えは返ってこなかった。
隙間を空けた黒衣部隊の壁から、背の高い細身のシルエットが浮き上がり、フエルト素材の中折れ帽、首周りが襟のないタートルネックになっている紺色のスーツをかっちり着込んだ男が現れた。
「はじめまして、ガンマといいます」
ブラケットランプに照らされた顔は蒼白く、目、鼻、口、耳などの各パーツが鋭利な刃物のように細く、狡猾なキツネを連想させた。
「血のニオイがプンプンするな。おまえ吸血鬼か?」
アルファは警戒心を張って身構えた。