吸血鬼は淫らな舞台を見る episode ι (エピソード・イオタ)
赤い絨毯の上を踏みしめるみたいに王様気分の優雅な足取りでやってきた中折れ帽の男は、ジェーンが車で崩した壁の大きな裂け目から部屋に入ってきた。
「少佐がわざわざ来られるなんて珍しいですね」
髭男が敬礼しながら嫌味すれすれに聞こえることを言った。
「三匹も吸血鬼を見つけたと聞きつければ、来ないわけにはいかないだろ」
中折れ帽の男は感情のない冷たい眼をして応えた。
そして、イオタの方へ視線を移動させる。
顔の各パーツが細く鋭く、昔話に出てくる人を騙すことに長けた狐に似ている。
蔑む眼で見られただけで、瞬殺されそうな雰囲気を感じた。