吸血鬼は淫らな舞台を見る episode ι (エピソード・イオタ)
「君の名前は?」
名前のことを訊かれたことは理解したが、中折れ帽の男に教えて得することはなにもないと判断してイオタは無視をする。
魚や虫に付ける【匹】という助数詞を使ったことは、かなり馬鹿にされている気がした。
「無理に答えなくてもいい。どうせ三匹とも始末されるんだから」中折れ帽の男は表情を崩して薄く笑った。「あとの二匹は?」
「子供らしき男の子の方は二階でバリケードを築いて立てこもっている状態です。女の方は森へ逃げて追跡中です」
髭男が早口で答えた。
「時間がかかりすぎてるな」
中折れ帽の男は静かな口調で注意する。