吸血鬼は淫らな舞台を見る episode ι (エピソード・イオタ)
ジッポライターのリンジのフタが開くカチッというささやかな音が惨酷に響く。
隊員の手から離れ、ジッポライターが床でバウンドして火が駆け足で縦横無尽に走り回り、あちこちから黒煙がわき上がる。
炎が皮膚を伝って熱を感じさせ、皮肉にもイオタに生きている証を示した。
「シータ大丈夫?」
「うん」
シータが返事をしてすぐ、天井を支えている大理石の柱がメリメリと音を立てて簡単に倒れた。
フェイクの大理石は燃えやすい材質でできていて、しかも中が空洞になっていた。
危険を察知した隊員達は退避し、屋敷に残されたのはイオタとシータのみ。