吸血鬼は淫らな舞台を見る episode ι (エピソード・イオタ)
「シータには敵わないな」
イオタは自分の正直な気持ちを吐露した。
とりあえず嫉妬という感情が肥大してシータに直接的な被害を与えることはしなかった。
僅かに残っているであろう純粋で真っ白な心は、そのうち脳内に生息する黒い化け物によって真っ黒く汚されるかもしれない。
「物音が聞こえる……」
シータが青ざめた表情で部屋から出て行く。
複数の足音と、プシュー、プシューという音が連続で聞こえてくる。
「白い煙が見えた。たぶん消化剤で火を消している最中だと思う」
物音のする方向へ視線を向けたまま、シータがすぐに引き返してきた。