吸血鬼は淫らな舞台を見る episode ι (エピソード・イオタ)
『私の声を聞いても驚かないのね』
「驚かないよ……ジェーンさん」
イオタは脳内から響く声の名を告げ、口角の片側を上げた。
『そろそろ声をかけてくる頃だと思ってた?』
「ぼくが八歳?のとき、いや三日前くらいにジェーンさんと地下の下水道から出て帰る車の中で、脳内に話しかけられたのを覚えてるんだ。でも、そのときジェーンさんは運転しながら喋っている様子がなかったから、あの声は二本の角を生やした脳内の黒い化け物だったんだろうなと思っていた。だから声の正体なんてどっちでもいいやというのが正直ないまの気持ち」
『あのときは私の体内のピコマシンからイオタ君の脳内へ話しかけるテストをしてみたのよ』