蝉時雨



「さっき学校に行って来たんだけど
その時に先生から預かったの」

「あら?何かしら?」

「数学の特別課題。
京介補習さぼってたから」

「まったく!!あの子ったら!!」

無事、話題をそらすことができて、
ほっと胸を撫で下ろす。






「京介いる?」

「うん、いるわよ。
でも、多分まだ部屋で寝てるわね。
菜々ちゃん、ついでに起こしてきてくれる?」

「うん、わかった!
あ‥‥涼ちゃんは?」

「涼太は居間じゃないかしら」

「そっか‥‥」

涼ちゃんがいると聞いて嬉しいのに、
なんだか少し胸が苦しくなる。

理由はわかってる。
一晩経ってもあの情景が頭に残っていて、
また思い出しそうになるのを
目をぎゅっと閉じて堪えた。








「あ、そうだったわ!」

おばちゃんの声にはっとして
慌てて下がった口角をあげ、笑顔を作る。






「昨日ね、おっきいスイカ頂いたのよ。
後で切るから京介と一緒に
下にいらっしゃい」

「わーい!!じゃあ京介起こしてくるね」

「うん、お願い」

そうしてようやく玄関へと足を進めた。



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