蝉時雨


いつもなら何も気にすることなく
開ける玄関の扉も、
できるだけ音が立たないように開けて
そーっと中に入る。




「‥お邪魔しまーす」
と呟いてみたけど 、こんな小さな声じゃ
聞こえるはずもなく返事は返ってこなかった。玄関や誰かがやってくる様子もない。

そのことにほっとしながら静かに靴を脱ぎ、
二階へと続く階段を見つめる。



二階へあがれば京介がいる。
でもどうやって話しかけよう。

いつも通りにすればいいだけなのに、
そうしようとすればするほど
変に意識してうまくいかない。



居間から微かに人の声がする。
時折、効果音も聞こえるから
きっとテレビの音声だろう。






「‥‥とりあえずまずは涼ちゃんとこ行こう」

と1人決意して、
相変わらず京介にどう話掛けるかは
決まらないまま音のするほうへと向かった。







< 135 / 225 >

この作品をシェア

pagetop