蝉時雨
数冊の単行本やファッション雑誌の中に一冊、
ウエディングドレス姿の女性が
まぶしい笑みを浮かべている表紙のものが
目についた。
普段男の人が手に取るような雑誌とは
明らかに雰囲気が違う、ブライダル雑誌。
圭織が持ってきたものだろうか。
それとも涼ちゃんが買ったの?
「‥‥そっか」
胸の中に苦々しく広がっていく虚しさに、
視線を落としたまま力なく笑った。
菜々子のため、
なんて理由はただのおまけで
ほんとはそんなのどうでもよかったんだ。
嘘つき
涼ちゃんの、嘘つき
もやもやとした嫌な感情が
じわじわと心の中を埋め尽くしていく。