蝉時雨
それを振り払うように
無理矢理口角をあげ笑顔をつくり、
顔をあげて涼ちゃんを見た。
「おばちゃん達は?
まだ帰ってきてないの?」
「ああ。俺が帰ってきたときに
ちょうど入れ違いで出掛けていったよ。
菜々子のとこと一緒に食事してくるってさ」
「京介も一緒?」
「ん?いや、京介は見てないな」
携帯を開いて涼ちゃんがメールを確認する。
京介からの連絡は入っていないようだ。
「母さんも何も言ってなかったし、
もしかしたら俺がいない時に
帰ってきてたのかもしれないけど。
菜々子は会ってなかったんだ?」
「‥‥うん。菜々子、今日昼くらいに
京介に用事があって来たんだけど
その時はもう出掛けちゃってたんだあ‥‥」
熟睡してしまっていたから
確実にはわからないけど、
京介が部屋に戻ってきた様子はなかった。
「そっかあ‥‥。帰ってきてないんだ」