蝉時雨
そうしてまた背を向けた涼ちゃんに
しばらくの沈黙の後で静かに問いかけた。
「電話の相手、圭織さん?」
「あー、うん。そうだよ」
麦茶を注いでいる涼ちゃんの横顔には
笑顔が浮かんでいる。
「何かあったの?」
菜々子の質問に亮ちゃんが一瞬動きを止める。
でもまたすぐに何事もなかったように続ける。
「‥‥‥なんで?」
菜々子の方には視線は移さずに、
手元のグラスを見ている涼ちゃんは
笑っているのに、
なんだか怒っているようで少し怖かった。