Reminiscence
「な……」
横でアズが絶句するのを聞いた。
しかしフェンはあえてそれを無視してノインをまっすぐに見つめた。
にらむのではなく、ただ問いかけるように。
ノインは立ち上がり、言った。
「すでに試練を乗り越えていたということか。それならば、私が聞くことなど既に無さそうだ。だが一つだけ……これは私の単純な興味だが。未来をどう見る?」
「既に消えてしまった過去を踏み台にして存在する未来なんて。私はただ、今もいる大好きな人たちを守るために新しい結界を張るだけだもの」
未来におこることはとっくにわかっている。
そこまでにどんな紆余曲折があろうと、結果だけは変わらない。
過去があるから存在する未来は潰えるべきだ。
過去がなくても存在する未来を、私は見る。
ノインは目を細めた。
この老人にはきっとまた違う未来が見えるのだろう。
アズが混沌を見てるように。
だが、ノインはこれ以上追及はしなかった。
「じゃあ、ネニャフルで一番と言われる歌を聞かせてくれないか。……そうだ、精霊を謳うものがいい。きっと、すばらしく美しいんだろうな……」
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