月下の踊り子
私は「ご苦労」とだけ短く答えて、平静を装い書類に目を通すふりをした。
惰性的に煙草を吸い、後半の見回りまで時間を潰す。
境は話しかけてこないし、私も話し掛けようとはしない。
故に訪れる沈黙。
時間が来た。
机から立ち上がり、電灯を持って見回りに向かう。
脳内に見回りと言う言葉はない。
無心で舞歌のいる牢を目指して歩く。
話の切り出しなんて考えていない。この状況だ。
自然に言葉が出てくるはず。