放課後は、秘密の時間…
階段を勢いよく駆け下りて、停めてあった車に乗り込む。


あかりはいつも、アパートの前にこの車があっただけで、俺がここに来ていることに気が付いてくれた。

たとえそれが、視界の悪い夜でも、雨の日でも。


そうして、微笑んでくれた。


『車があるの見るとね、大也が来てくれてるって、嬉しくなっちゃうの』


だけど、今日は――

多分、あの男のことで、頭がいっぱいだったんだ。


考えるだけで、吐き気にも似た怒りがじわじわと生まれてくる。

拳がぶるぶると震えるほどの怒りに支配されるのは、初めてだった。


息をする度に、焼け付くような痛みが胸に走る。


どうしてだ?


あかりがあんなことをしたのには、何か理由があるのか?

うまくいっていたと思っていたのは、俺だけだったのか?


どうして、キスなんか――……


あの行為は、裏切りだ。


頭の中で、そんな言葉が巡っている。

そうだ、俺に対する裏切りの行為には違いない。


――けれど。

あの瞬間をこの目で見たというのに、あかりへの想いは少しも揺らいでいない。


むしろそれは、独占欲に包まれ、以前よりも強くなっていた。

< 286 / 344 >

この作品をシェア

pagetop