永劫の罪人 光の咎人
 あまりの形相にロンドは固まる。何度かまばたきしてから、ようやく声が出た。

「……あ、あの、何かあったのですか、ガスト様?」

 ロンドの唇は震え、それにつられて声も揺れる。

 ガストは教会の警護隊の隊長だ。ほかの隊員たちに怒号を飛ばすところを、何度も見かけている。
 穏やかな気性ばかりの僧侶たちの中で、彼の猛々しさは異質だった。

 辺りを見渡しながら呼吸を整えると、ガストは目を吊り上げて叫んだ。

「ロンド様、教会に賊が侵入しました!」

「え……ええっ!」

 予想もしなかった事態に、ロンドは目を点にした。

「早くこちらへ来てください。まずは貴方を安全な場所へ――」

 突然のことでロンドがおろおろしていると、すかさずガストが駆け寄り、ひ弱な細い腕をつかむ。

 そのとき、ガシャーンッと、床に食器棚が丸ごと倒れこむような高い音――神聖な教会にあり得ない音が、廊下から響いてきた。

「「ヴィバレイ様!」」

 二人は同時に叫ぶと、あわてて大礼拝堂から廊下に出る。

 目の前で賊が数名、無残に割られた廊下の窓ガラスから逃げようとしていた。
 褐色の布を巻いて顔を隠した彼らは、黒い外套の裾をなびかせ、外へと消えていく。

 そして奥の間には、狼狽するヴィバレイとシムの顔があった。
 身を守るために法術を使ったのか、二人の体は微光をまとっている。

「秘薬の小瓶をひとつ盗まれた! 誰かあやつらを捕まえてくれ!」

「くっ」

 ガストが賊を追いかけ、割れた窓から出ていく。
 その背を見ながら、ロンドの顔は青ざめていった。
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