永劫の罪人 光の咎人
 必死に口を動かすロンドとは対照的に、飄々とした男の様子は変わらない。

「『永劫の罪人』? 何だその仰々しいモンは?」

「詳しい話は後です。手を離してください!」

 男は肩をすくめて「しょうがないな」と、ロンドから手を離す。

 前のめりになって、ロンドが槍の元へ行こうとする。
 しかし秘薬の光は強くなり始め、もう止められないことを伝えていた。

 どうすればいい? 必死に考えるロンドの後ろで、男がぼやいた。

「えーっとつまり……ようはアイツら極悪人を生き返らせて、混乱に乗じてこの国をひっくり返そうとしていたわけか。うわっ、くだらねぇ」

 信じられない言葉に驚き、ロンドは弾かれたように男へ振り向く。

「国をひっくり返す!? 何て大それたことを……」

「あ、オレは単に雇われただけのよそ者だから、これっぽっちも考えてないけどな。しっかし、ここまで聞いて逃げるっていうのも後味悪いな」

 男は槍の地へ身体を向け、剣を抜いた。

「少年、オレを雇え。極悪人が甦ったら、速攻でぶっ倒してやる。報酬は金じゃなくて、オレを見逃してくれるだけでいいからさ」

「え、え、ええ?」

 ロンドが戸惑っていると、ビクターは腰を落として剣を構える。一瞬にして軽かった空気が沈んだ。

「オレの名はビクター。しっかりオレの汚名返上を見ていてくれよ」

 槍に浴びせられた淡い光は、少しずつ強くなっていく。

 微光は光へ変わる。
 光は激光へと変わる。

 そうして激光は閃光へと変わる。

「うわあっ!」

 閃光に思わずロンドは目をかばう。
 かばいながらも、袖の隙間から光の先をどうにか見ようと試みた。

 光の中心に人影が見える。
 わずかだが、体に丸みのある人影だ。

(……女の人?)

 影はこちらへ、ゆらりと近づいてくる。

 光が少し弱まった。

 悪名高き『永劫の罪人』だ、急に暴れるとも限らない。ロンドは怯えて一歩後ずさる。

 しかし影が薄れ、彼女の姿を見た途端……怯えよりも驚きが勝った。
 ロンドの隣で、目をこすって視界を取り戻したビクターも、目を丸くしている。 

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