アイシング、マイラブソング

「悠、おはよ」



「…おはよう」



「まだ7時半だよ?」



「千架こそ早いじゃん」



「そりゃあ…これから一人暮らしが始まるし、ドキドキしっぱなしだもん…」



「そっか、それもそうだ」



会話が途切れた。



―どうしようかな

―がんばれよ、なんてありきたりだし

―何と言えばいいか…




「ちょっと、歩かない?」




悩んでいると千架が散歩に誘ってくれた。



「よく自転車で走った川まで」



「え?8時に間に合わなくなるよ?」



「いいの。新幹線指定席じゃないし、向こうには夕方までに着けばいいから。4、5時間あれば余裕」



「そ、そうなの?」




―じゃあなんでこんな早い時間から…




僕の疑問を置いてけぼりにして、千架はキャリーバッグをゴロゴロひいて歩き出した。



「あ、それ持っていくよ」



「大丈夫、重くないから」



後を追う僕に振り返って見せてくれたこの日最初の明るい笑顔。


やっぱり太陽と同じくらい、僕には眩しく見えた。
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