アイシング、マイラブソング
突然、千架がしゃがみ込んだ。

おもむろに砂を集めて山を作る。


「なに、トンネル作るの?」


「お城!」


「えっ?」



「… やっぱ、無理かぁ」



思わずふっと笑みがこぼれた。

千架があまりに子供みたいに笑って言うから。


「仕方ないねぇ…藤堂さんは」


僕も腰を降ろして千架に付き合った。

砂遊びにはちょっと自信がある。

幼稚園の頃、
『おすなのゆうくん』の異名を持っていた。


…ただ単に誰よりも一番大きい山を作っただけだが。


千架にその話をすると。


「お砂の悠くん、よろしくねっ」


思いがけず初めて名前で呼ばれて、
僕にまたひとつ千架へのドキドキが増えた。
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