アイシング、マイラブソング
『おすなのゆうくん』はあの時よりも体が大きい分、その実力を発揮して

高さ50センチ位の山ができた。


僕が穴を掘り始めた対角から、千架も同じことをした。


―このまま行くと…


指が触れる。


―今はダメだ


自分に言い聞かせて、

貫通の寸前の、

千架が掘っている砂の壁がもそもそと動いているところで手を引いた。

単に砂の熱か、
千架のぬくもりか、
手に温かさが残っている。


「やった!」


「トンネルできた?」


「うん!」


「あ~あ、藤堂砂だらけ」


「あ~…ははは」


自然と笑い合った。

かく言う僕も砂まみれだったから。

この感じが快い。
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