【長編】雨とチョコレート
しのの顔色を伺うようにして見ていると、20センチの下からの視線が、俺のそれとぶつかった。


少し動揺してるみたいだ。


「違うの。話、・・は、聞いてたよ。
びっくりしちゃったの。
やっぱり、れい君は気づくんだな、って」


どうやら感心されてるようだ。


俺は訊きかえした。

するとまた、うん、と頷いて黙ってしまった。


いくら気になっていても無理に訊くわけにはいかない。

そう言いきかせて、しのを見守った。





学校の校門を出てしばらくすると、ふと、しのの口が開いた。


「進路・・・どうしたらいいのかな、って」



そうか。もう、そういう年なんだ。



「・・・ずっと悩んでた・・・?」

「うん。だって、もう、3年でしょ?
私、ゆりぴょん苦手だから、相談もできないよ」


意外だった。

――ゆりぴょんが苦手?


万人から愛されてる人なんていないとは思ってるけど、まさか、ゆりぴょんを苦手だっていう人がこんな身近にいたとは。





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