【長編】雨とチョコレート
廊下に飛び出て左右を見ると、扉に寄りかかるようにしてしのが立っていた。


「送ってく、って言ってたから・・・」

「あ、うん。送ってく、うん」


まさかしのが待っていてくれると思ってなくて、・・いや、しのなら待っててくれる。

そういう子だ。



俺はしののカバンを持ってやった。

最初、持ってやると言ったときは遠慮がちにしていたけど、しばらくすると、笑ってありがとうと言ってくれた。


こうやって2人並んで帰るなんて、2年の最後以来だ。

しのと俺の身長さは20センチくらいある。

178センチの俺からは、しののつむじが見える。


「しの、」



20センチ下の顔を覗き込んだ。



それから、ちょっと不安になってたことを訊いてみた。


「今日、クラス分けのあたりから、ずっと調子悪くなかった?」

「え?」



また話を聞いてないようだった。



「ごめん・・・。今も調子悪いんだよな。
無理にしゃべることないから・・・」

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