【長編】雨とチョコレート
・・・・・胸がいたい。
「家の前じゃあれだから、公園に行こ?」
しのの声が切ない。
連れてかれるままあとを追って、近所の公園のブランコに座った。
しの、って呼ぼうとしたとき、彼女がブランコを揺らした。
「ゆりぴょんってさぁ、若いじゃん。
確か27歳じゃん?」
その言葉から、俺はこの先のことを予想することなんて全然できてなかった。
俺は、ぽつ、ぽつ、と紡がれるしの声に耳を傾けていた。
声を聞きながら、適当に相槌を打って、しのと揺れるブランコを見ていた。
「あのね、ゆりぴょんってれい君のこと好きなんだと思う」
「!はぁ?」
何言ってんのおまえ!
おまえなんて言い方、長い付き合いだけど使ったことないよ、しのには。
なのに、ちょ・・・何言ってんの!?
「れい君は、そういうとこ鈍いんだよねー。
わたしが鋭いのかもしれないけど。」
しのの目がマジだった。
(この時『しの相当じゃないかよっ!!』と思ったのは言うまでもない)