【長編】雨とチョコレート
「ほら、私のあんまり好きじゃない生物の先生の名前。
誰だっけって聞いたんだけど・・・?」
しのは軽く頷いただけで、あとはまた黙ってしまった。
なんだか調子が悪そうだ。
「・・大丈夫?」
「あー・・・ごめん。具合悪いかも・・・。今日はもう、帰るね・・・」
しのはそう言うと自分のカバンをとりに行ってしまった。
それを見ていた俺の背中を、また、とんとん、と神崎が叩いた。
口が「送ってけ」と言ってる。
しのは黙ってカバンを持つと、教室の扉の前で「ばいばい」と手を振った。
「待って、しの! 送ってく!」
急いで自分の荷物をまとめると、彼女のあとを追いかけた。