好きな人は、
「はい、教室戻ろう。」
カシャン、と先輩が体を預けていたフェンスが音をたてる。
「えーやだー。」
「ワガママ言うんじゃないよ。」
「勉強やだもん。」
あ、そう。
三木先輩は薄情にもそう言って、屋上に居座ろうとするわたしを放ったまま、30分前に上がってきた階段のドアを開けた。
「俺は戻るから、ごゆっくり。」
パタン、と無情にアッサリ閉まるドア。
……三木先輩がいないとココにいる意味無いんだってば。
分かってないなあ、もう。
ブーっとフグのようにむくれてみた後、小走りで三木先輩の背中を追って、見つけたそこに思いっきり体当たりしてやった。
「………いた。」
あまりにも冷静なリアクション。
やっぱり女の力じゃ吹っ飛ばないか。いや、吹っ飛ばす気なんて無かったけど。
「あれ、屋上でサボるんじゃなかったの。」
「やめた。」
「なんで。」
「三木先輩が授業出るから、わたしも出るの。」
「………ふーん。」
この時かすかに、優しい笑みが彼の顔に浮かんだ。
フッ、と思わず零れたような温かい感じ。
……さっきまで"きもい"だの"変態"だの"死ねば"だの言ってたクセに、こんな優しい顔で笑うなんて、変なの。
そんな変な人を大好きなわたしも、変なの。