誠-変わらぬ想いの果て-
――――函館
土方は木の根元にドカッと腰を下ろし、空を見ていた。
自然と目が、昔京で見たのと似た雲を探しているのに気づき、溜め息をもらす。
――近藤さん達にあわせる顔がねぇな…。
その想いが土方を約束の地から遠ざけていた。
「ため息ついたら、ただでさえ少ない運が逃げますよ」
どこからか懐かしい声が聞こえてくる。
だが、そんなはずはない。
あの少女は眠りについているのだから。
「――俺もとうとう焼きが回ったか。
幻聴が聞こえてくるなんざ」
「年だからね。
トシならぬ年…なんて」
「………………」
土方はとうとう押し黙った。
声の主が信じられなかったわけでは最早ない。
沸き上がる怒りを必死にこらえるためだ。