誠-変わらぬ想いの果て-



――――函館




土方は木の根元にドカッと腰を下ろし、空を見ていた。


自然と目が、昔京で見たのと似た雲を探しているのに気づき、溜め息をもらす。




――近藤さん達にあわせる顔がねぇな…。




その想いが土方を約束の地から遠ざけていた。




「ため息ついたら、ただでさえ少ない運が逃げますよ」




どこからか懐かしい声が聞こえてくる。


だが、そんなはずはない。


あの少女は眠りについているのだから。




「――俺もとうとう焼きが回ったか。

幻聴が聞こえてくるなんざ」



「年だからね。

トシならぬ年…なんて」



「………………」




土方はとうとう押し黙った。


声の主が信じられなかったわけでは最早ない。


沸き上がる怒りを必死にこらえるためだ。



< 13 / 254 >

この作品をシェア

pagetop