レジェンドは夢のあとに【8/18完結】
その言葉に、ワタルが顔を上げた。
あたしも驚いた。
…ワタルを連れてきたときも、林田さんは、そんな素振りは一切見せなかった。
「ふと、山村タケルのことが胸をよぎったんだ。ほとんど関わりなかったのに。
だから昼休み、社長に問い詰めて聞いたんだ。そしたら、ワタルの兄貴だって。
それ以上は何も言わなかったけど、あのおっさんはたぶん全部わかってた。お前がこの事務所によくない感情抱いてんのもな」
ワタルの唇が、声が僅かに震える。
「知っていて…なんで俺を…」
「…なんだ、まだ分からないのか」
しょーごさんはゆっくりと立ち上がりながら、微笑んだ。
「チアの目を信じたからだよ」
その言葉と同時に、ドアがバン!と乱暴に開いた。
「おい、MCが終わる!急げ!」
林田さんが怒鳴る。
しょーごさんが「やべ」と壁の時計に目を遣った。
「あと3分。行くぞ」
「…でも」
「でもじゃねぇよ」
躊躇うワタルの腕を、アキトが掴んだ。