レジェンドは夢のあとに【8/18完結】


「4万人を裏切る気か」


ドアを開けて部屋を出るときに、ワタルが林田さんに顔を向けた。

林田さんはいつもと変わらない表情をしている。



「…しっかりやれ、ワタル」


それでもその声は、いつもより優しかった。

ワタルが顔を上げて、林田さんを見つめる。


「お前は兄貴ができなかったことをできるんだ。チャンスを掴んだんだ。
がっかりさせるんじゃない」


ワタルの大きな目から、涙が溢れた。

廊下にいた彩花さんが慌ててハンカチを渡す。



「ちょ、ワタル!まだ泣いちゃだめよ。ほら目薬さして充血取って」


「あと1分! 急げ!」




てんやわんやで、バタバタしながらステージに向かう。

去り際に、しょーごさんは一瞬こっちを振り向いて、微笑んだ。


その唇が、動く。


――あとでな。




あたしは首に当てたタオルを取った。


…かすり傷だったおかげで、血はもう止まっていた。


「チア」





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